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やさしく解説Q&A:EU AI Actとは何ですか?

AI(人工知能)の進化により、私たちの暮らしやビジネスにAIを活用する場面が増えてきました。しかしその一方で、「AIによって人権が侵害されたらどうするのか?」「安全性は確保されているのか?」といった懸念も出てきています。そうした問題に対応するために、EU(欧州連合)が世界で初めて導入した包括的なAIのルールが「EU AI Act(欧州(EU)AI規制法)」です。


この規則は、日本の企業にも影響を及ぼす可能性があるため、国際ビジネスに関わる企業の経営者や法務・開発担当者の間で注目が高まっています。


EU AI Actとは「AIを使ったシステムのリスク」に応じて規制の厳しさを変える仕組みです。


大きく分けて以下の4つに分類さす:


- 禁止されるAI:社会的信用スコアで人を評価するAIなど、倫理的に問題のあるもの

- 高リスクAI:雇用・教育・インフラ・法執行など、生活に大きく関わる分野で使われるAI

- 限定的リスクAI:チャットボットなど、「これはAIです」とユーザーに伝える必要があるもの

- 低リスクAI:レコメンド機能や翻訳など、リスクがほとんどないもの


このように、すべてのAIが厳しく規制されるわけではなく、あくまで「使い方によって対応が異なる」というのが特徴です。


EU域内でAIを使うすべての企業が対象ですが、EU外の企業でも、EU市場向けにAIを提供・利用する場合はこの規則が適用されます。


なぜこのような規則が必要なのか?背景と理由


AIはとても便利ですが、「どう動いているか分からない」「判断にバイアスがあるかもしれない」といったリスクもあります。特に医療や雇用などの重要な分野でAIが間違った判断をすると、大きな影響が出るおそれがあります。


そこでEUは、AIのリスクを分類し、高リスクのものにはしっかりしたルールを設けて、安全性や透明性を確保する仕組みを作ったのです。


よくある誤解:すべてのAIが規制対象になるわけではない


「AIを使っているだけで規制されるの?」と思う方もいますが、それは誤解です。実際には、使っているAIの種類や用途によって、必要な対応はまったく異なります。


たとえば、商品をおすすめするレコメンド機能や自動翻訳といったAIは、リスクが低いため、特別な対応は求められていません。一方で、雇用や教育、医療など人の生活に深く関わる分野では、より厳しい管理が必要になります。


企業が気をつけるべき実務上のポイント


日本企業でも、次のような場合にはEU AI Actの対象となる可能性があります:


- EUの顧客向けにAIを使った製品・サービスを提供している

- EUの企業にAI技術を販売・導入している

- EUユーザー向けにオンラインAIサービスを展開している


そのため、開発部門・法務部門・営業部門が連携し、自社のAIがどの分類にあたるかを確認し、必要な体制を整えることが大切です。


高リスクAIに該当する場合は、リスク評価や記録の保存、説明責任の確保といった対応が求められます。


専門家ができるサポートとは?


EU AI Actは技術・法律の両面からの理解が必要になるため、行政書士や弁護士、ITコンサルタントなどの専門家に相談することが有効です。


具体的には:


- 自社のAIがどのリスク分類に当たるかの診断

- 必要な技術文書の整備や社内体制の構築支援

- CEマーキング(EUで製品を販売するための認証)の取得支援

- 利用規約や契約書の見直し

- 社内規程の整備や社員向けの研修


など、さまざまな面からのサポートが可能です。


まとめ:EU AI Actは今後の国際スタンダードになる可能性が高い


EU AI Actは、AIのリスクを管理しながら安全に活用するための、世界で初めての本格的なルールです。今後、他の国や地域でも似たような規制が導入される可能性が高く、国際ビジネスに関わる企業にとっては無視できない存在です。


自社のAI活用がどのリスク分類に当たるかを早めに確認し、必要であれば専門家の力を借りて準備を進めることが、安心・安全なビジネス展開につながります。

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