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いちから分かる!スモールビジネスのためのCookie入門:第4回 Cookieポリシーは必要?掲載が義務となるケースと実務のポイント

これまでのブログでは、Cookieの基本的な仕組みや種類、そして日本国内外における規制の違いについて解説してきました。


第4回となる今回は、より実務的なテーマとして「Cookieポリシーはどんなときに必要なのか?」「実際にどう作成すればよいのか?」という点に焦点を当てます。


スモールビジネスオーナーや個人事業主の皆さんの中には、「うちのサイトは小規模だから、ポリシーなんて必要ないのでは?」と思っている方もいるかもしれません。しかし、法改正により、特定の条件に該当する場合は、明確な対応が求められるようになりました。


本記事では、Cookieポリシーの掲載が義務となるケースを分かりやすく整理し、加えて、実際にポリシーを作成する際のチェックポイントや記載例も紹介します。ぜひ、安心してウェブサイトを運営するための参考にしてください。


 

Cookieポリシーが必要なケースは?


すべてのウェブサイトにCookieポリシーの掲載が法的に義務付けられているわけではありません。必要となるのは、主に以下の3つのケースです。


ケース1:個人情報に紐づいたCookieを第三者に提供している

改正個人情報保護法では、Cookieのような識別子情報が、他のデータ(氏名、メールアドレスなど)と紐づけられて、個人を識別できる状態になると「個人情報」として取り扱われるとされています。


さらに、そのようにして得られた個人情報を第三者(広告事業者など)に提供する場合には、本人の同意を取得することが法的に義務付けられています。この同意取得を行う手段のひとつが、「Cookieポリシーの提示とその内容への同意取得」です。


例えば、Cookieと購入履歴・会員IDを連携し、外部の広告配信事業者に提供する場合は、ユーザーの同意を得なければなりません。


もっともこの場合、Cookieポリシーを単体で作成する義務はなく、プライバシーポリシーのなかで、Cookieの取扱いを公表することも可能です。企業によっては、Cookieの利用について分かりやすく整理するために、プライバシーポリシーとは別に、Cookieポリシーを作る企業が増えています。


ケース2:外部送信規律(電気通信事業法)の対象である

2023年の電気通信事業法改正により、ウェブサイト等を通じてユーザーに関する情報(Cookieや広告ID等の識別子、閲覧履歴・行動履歴)を外部の事業者へ送信する場合、「外部送信規律」の対象となることがあります。


どのような事業者が外部送信規律の対象となるかは、第3回「Cookieは法律でどう扱われる?日本のCookie規制」で説明しています。


このようなデータの外部送信を行う事業者は、以下のような対応が求められます:

  • Cookieポリシーなどを用いて、ユーザーに必要な情報(外部に送信するユーザーの情報は何か、など)を通知・公表する

  • 同意取得のしくみ(Cookieバナーなど)を導入する

  • オプトアウトの選択肢を提供する


ただし、次のようなサイトは原則として「対象外」とされています:

  • 自社や店舗の紹介ページ

  • 自社商品の販売を目的とするECサイト

  • 個人が趣味や活動について発信しているブログ


上記であっても、業界情報などの情報を大量に発信する「オウンドメディア」が自社サイト内にある場合には、規制の対象となる可能性があるため、注意が必要です。


ケース3:海外取引がある場合

ウェブサイトでEUやイギリス、カリフォルニア州など、プライバシー規制の厳しい国や地域のユーザーと取引がある場合、現地法(例:GDPRやCCPA)の影響を受ける可能性があります。


たとえば、EUでは「Cookieの使用に関して事前の同意を得ること」が義務付けられており、日本の法律以上にCookieの使用と通知に厳格な基準が設けられています。そのため、海外からのアクセスが見込まれるサイトでは、国内法だけでなく、該当地域の法令も意識したCookieポリシーの整備が必要になることがあります。


Googleアナリティクス(GA)を導入したら、Cookieポリシーは必要?

GAは、Cookieを通じて収集した情報を、Googleのサーバーに送信しているため(2025年6月現在:GA4)、電気通信事業法の外部送信に当たる可能性があります。


しかし、GAを使っていても、サイトが「外部送信規律の対象外」であれば、Cookieポリシーの作成は、法律上は必須ではありません。


ただし、Googleが、ユーザーに対してデータ利用についての明示的な説明と通知を求めているため、実務上は、プライバシーポリシーの中に、以下のように記載するとよいでしょう。

記載例:

当サイトでは、Google LLCが提供するアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」を利用しています。


Googleアナリティクスでは、サイト訪問者のアクセス情報(閲覧ページ、ブラウザ情報、IPアドレス等)を、Cookieを通じて収集し、Googleのサーバーに送信しています。これらの情報は、サイト改善のための統計分析に使用され、個人を特定するものではありません。


Cookieの使用は、ブラウザの設定で無効にすることができます。

詳細は以下のリンクをご参照ください:

• Googleアナリティクス利用規約

• Googleポリシーと規約

• オプトアウトアドオン

法的な義務はないけれども…


必ずしも法的義務は発生しないものの、ユーザーの信頼を得るためにCookieポリシーの掲示をしているケースが最近増えています。


こうしたケースでは、透明性の高い運営姿勢を示す意味で、Cookieの利用について記載しています。結果として、ユーザーからの信頼や安心感の向上につながり、サイト全体の信頼性を高める効果も期待できます。


外部送信規律に対応したCookieポリシーとそのポイント解説


実際にCookieポリシーを作成する際には、法律の要件を満たしつつ、ユーザーにとっても理解しやすい内容であることが重要です。


ここでは、外部送信規律に対応したCookieポリシーのひな型をもとに、押さえておくべきポイントを整理します。


 



タイトル例:Cookie等の利用および外部送信に関するご案内(Cookieポリシー)


  1. Cookieとは何かの説明

Cookieという仕組みが初めて登場するユーザーに対して、その基本的な役割と意味を簡潔に解説することが目的です。

記載例:

Cookieとは、ウェブサイトがユーザーの端末に一時的に保存する小さなデータファイルです。当サイトでは、お客様により便利にご利用いただくため、Cookie等の技術を利用しています。これにより、お客様のウェブサイトの利用状況などの情報が、外部の事業者に送信されることがあります。


Cookie自体に氏名や住所、メールアドレスなど個人を特定できる情報は含まれませんが、Cookieを利用することでユーザーの閲覧履歴、サービス利用履歴、位置情報など個人を特定しない範囲の情報を取得する場合があります。

  1. 使用しているCookieの利用目的を明示する

サイトがCookieを使用して何をしているのか(例:アクセス解析、広告表示、ログイン状態の維持など)を具体的に説明しましょう。ユーザーが自分のデータがどう使われているのかを理解できるようにすることが大切です。


記載例:

当サイトでは、以下の目的でCookieを使用しています。なお、取得したCookie情報が個人情報に該当する場合は、当社のプライバシーポリシーに従って取り扱われます。


・アクセス解析(サイト訪問者数やページ閲覧数などの統計データの収集)

・ログイン状態の維持や、言語設定の保持などの利便性向上

・過去の閲覧履歴をもとにした広告の最適化表示(ターゲティング広告)

・ ……

3. 外部送信先となる事業者

ここでは、外部送信規律で公表が義務付けられている項目(どんな情報を誰に、なぜ送っているのか)を明示します。利用しているサービスそれぞれについて記載してください。

記載例:

当サイトは、以下の外部事業者のサービスを利用しています。


  • 送信先のサービス名:

  • 送信先企業名:

  • 送信される情報:

  • 送信元における利用目的:

  • 送信先における利用目的:

  • オプトアウト:

  • プライバシーポリシー等:

  1. オプトアウトや設定変更の方法を案内

ユーザーが自分のブラウザ設定や専用リンクからCookieを無効にできる方法を案内すると、透明性の高い運営となります。

記載例: ユーザーは、ブラウザの設定によりCookieの使用を拒否することができます。この場合、当サイトの一部機能(表示の最適化など)が正常に動作しなくなることがありますのでご了承ください。Cookieを無効化または削除する方法については、ご利用のブラウザの公式サポートページ(例:Chrome、Safari、Firefox、Edge等のヘルプ)をご参照ください。

特定の広告配信サービスについては、以下のリンクから配信停止(オプトアウト)手続きを行うことが可能です。

<広告配信会社のリンク>


5. Cookieの取り扱いに関するお問合せ先

Cookieの取り扱いに関するお問い合わせ窓口(苦情の申し出先)の設置は、法律上の義務ではありませんが、サイトの信頼性を保つために、設置することは大切です。決まった記載のルールはなく、事業所の住所や電話番号を省いても大丈夫です。

記載例:

Cookieの利用に関するご質問やご相談がございましたら、以下のメールアドレスまでお問い合わせください。 メールアドレス:contact@example.com


まとめ 〜Cookieとの正しい付き合い方を学ぼう〜


これまで4回にわたって、Cookieの基本から技術的な仕組み、法律との関係、実務的な対応方法までを解説してきました。Cookieは、ウェブの利便性を高める重要な技術である一方で、個人情報やプライバシーの観点からは慎重な対応が求められる存在でもあります。


スモールビジネスオーナーや個人事業主の皆さんが、これらの知識を身につけ、必要なポリシーを整備することで、ユーザーからの信頼を獲得し、安心してサービスを提供することができます。


これからも、法律や技術の変化に目を配りつつ、「分かりやすく・誠実な情報提供」を心がけていくことが、信頼されるウェブ運営の第一歩です。


本シリーズが、その第一歩を踏み出すお手伝いになれば幸いです!


参考

「Cookieポリシー作成のポイント」-TMI総合法律事務所(中央経済社)

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