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生成AIと著作権問題:朝日新聞・日経新聞が米企業を提訴した理由とは?

2025年8月、朝日新聞社と日本経済新聞社が、アメリカの生成AI企業「パープレキシティ」に対し、著作権侵害などを理由に東京地方裁判所へ共同で訴訟を起こしました。


訴状によると、両社の記事が無断で複製され、AIによる検索回答として利用されていたほか、誤った内容があたかも自社記事であるかのように表示されていたことが確認されたとのことです。


その結果、報道機関としての信頼が著しく損なわれたとして、記事の利用差し止めと削除、さらに総額44億円の損害賠償を求めています。


問題の背景:AIによる無断転載の実態


生成AIを使った検索サービスでは、既存のウェブコンテンツをもとに回答を自動生成します。


実は、AIが新聞記事などを読み込んで「学習」する行為自体は、日本の著作権法上、著作権侵害にはあたりません。


今回問題となっている「パープレキシティ」は、ユーザーの質問に対し、各メディアの記事を無断で複製し、その一部を引用して回答を表示していたと報じられています。


しかも、引用元として朝日新聞や日経新聞の社名が表示されていたにもかかわらず、元記事と異なる、あるいは誤解を招く情報が含まれていたという点が、問題をさらに深刻化させています。


これらは、著作権法における「複製権」や「公衆送信権」の侵害に該当する可能性があり、訴訟ではまさにこの部分が争点となっています。


なお、海外では、日本とは著作権法の考え方や運用が異なる部分があり、「AIによる学習は常に合法」とは言い切れません。生成AI企業が「どの国の著作物を学習して、どこで出力するか」によって著作権侵害に問われるかどうかが変わってくるという、非常に複雑な状況です。


パープレキシティの対応


2025年8月29日、訴訟の渦中にある「パープレキシティ」が、新たな対応策を発表しました。


それによると、ユーザーが月額料金を支払うことで、提携する報道機関の記事を正規に参照できる有料サービスを今秋から開始するとのこと。 このサービスでは、収益の8割をAIによる引用回数や閲覧数に応じて、引用元の報道機関に分配するとしています。


すでに4250万ドル(約62億円)を確保しており、既存の有料サービスの収益の一部も分配に充てる予定とのことです。


この発表に対して、朝日新聞社は「コメントは差し控える」としており、現時点で訴訟の取り下げなどは表明されていません。


生成AIが提供する情報の「出典」や「正確性」は業界全体の課題として注目され始めています。



企業の信用リスクとは?中小企業・個人事業主が注目すべきポイント


新聞社にとって「情報の正確さ」と「信頼性」は何より重要です。そのブランド名が、誤った内容と一緒に表示されれば、読者の信頼を大きく損なうリスクがあります。


中小企業や個人事業主にとっても、「名前」や「ブランド」が誤情報と結びつけられるリスクは同様です。


「大手新聞社の話でしょ?」と思われるかもしれませんが、実は中小企業や個人事業主も同様のリスクを抱えています。


会社のHP、ブログ、SNS、資料、チラシなど、オンラインで公開されているあらゆるコンテンツは、AIによって取得・再利用される可能性があります。


特に、専門性の高い内容や独自の解説は、AIにとって「学習価値が高い」素材とされやすいのです。


自社の文章や図解が、無断でAIに使われ、その結果、誤った形で顧客や見込み客に伝わってしまった場合、それが原因で誤解が生まれたり、クレームにつながることもありえます。 最悪の場合、ブランドや代表者の信用低下にも直結しかねません。


自社コンテンツは守られているか?


HPやブログ記事、サービス紹介文、画像や動画など、自社が発信しているコンテンツは、実は多くのAIに学習・利用されている可能性があります。今のうちに、自社コンテンツが無断で使われていないか確認しておくことが大切です。


著作権の保護においては、以下のような基本対策を取ることが有効です。


  • 無断転載禁止の明記(利用規約やフッターに表示)

  • コンテンツのスクレイピング防止設定

  • 定期的な検索チェック(自社名+記事タイトルなどで検索)

  • 重要な記事はタイムスタンプ保存や、証拠保全しておく


また、必要に応じて「著作権登録」や「著作権侵害対応サポート」が利用できるサービスを検討するのも一つの方法です。


トラブル時に相談すべき専門家とは?


著作権のトラブルに巻き込まれた場合、まずは行政書士や弁護士といった専門家に相談することが大切です。


行政書士は、著作権の登録や契約書の整備、法的リスクの予防策に強みがあります。一方、訴訟や損害賠償の交渉が必要な場面では、弁護士のサポートが必要になる場合もあります。


早めの相談が、被害の拡大を防ぐ鍵となります。


生成AI時代における情報発信とリスクマネジメント


AIが情報を自動で取得し、誰かの名前やブランドと結びつけて世界中に広げる時代。便利な一方で、発信者側にも「守る意識」が求められるようになりました。


自社のコンテンツを守るためにも、今一度「著作権」や「情報の取り扱い」について見直してみませんか?


著作権の基本的な整理や、トラブル予防のためのサポートが必要な場合は、どうぞお気軽にご相談ください。行政書士として、みなさまの情報発信と権利保護をサポートいたします。

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