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セミナー開催で“訪問販売”扱いに!? 特定商取引法とクーリング・オフの注意点


スタートアップや個人事業主にとって、まず自分のことを知ってもらう手段として、オフラインのセミナーはとても有効な方法です。


最初はごく少人数であっても、実績になりますし、商品やサービスを自分の人となりと一緒に知ってもらえる良い機会となります。無料セミナーを通じて、自分の商品やサービスの契約につなげたいと考える方もいるでしょう。


しかし、セミナーの開催には、注意しないと見落としてしまう法律上の落とし穴があることをご存知でしょうか?


知人だけの参加、少人数での開催であっても、セミナーを主催する際には関連する法律を守らなければなりません。


このブログでは、対面セミナーを開催する際に知っておきたい法律について、開催準備から当日の流れにそって、分かりやすく解説します。


セミナーやります!案内文を作る時に知っておきたい景品表示法


初めてのセミナーを開催するとき、チラシやSNS投稿を作る際には、なるべく多くの人に集まってもらいたいと、お客様の興味を引く表現を使いたくなるかもしれません。


しかし、「必ず○○円稼げるようになる!」「これであなたも〇〇に絶対なれる!」といった、根拠がないのに効果を断定するような表現は、景品表示法における優良誤認表示に該当する可能性があります。


また、セミナーに参加特典をつけることは一般的ですが、景品表示法では、こうした特典に対して金額の上限が定められています。参加費と比較して過剰な特典を提供すると、違法となるおそれがあります。


いよいよ申し込み開始!知っておきたい個人情報保護法の義務


チラシを作成し、告知も行いました。いよいよ募集開始です。ウェブ上で、氏名・メールアドレス・電話番号などを入力できる申込フォームを用意する場合、意すべきなのが個人情報保護法です。


この法律では、事業者が個人情報を取得する際には、その利用目的を公表または本人に通知しなければならないと定められています。


「セミナーを開催するため」「アンケートを実施するため」といった利用目的を明示せずに、個人情報を取得することは、法律違反となります。


また、明示した目的以外に個人情報を使うことも原則としてできません。お客様が「送っていいよ」と同意している場合を除き、後日、セミナーとは関係のない自社商品やサービスを案内することは控えましょう。


セミナー開催で“訪問販売”扱いに!? 特定商取引法とクーリング・オフの注意点


いよいよセミナー当日です。セミナー中は商品やサービスの勧誘をする予定はなかったものの、終了後の雑談でお客様と意気投合し、「実はこんなサービスがありますが、いかがですか?」と勧誘し、その場で申込書に記入してもらうことに。


自然な流れのように見えますが、実はこれ、「特定商取引法」における訪問販売に該当する可能性があることをご存知でしょうか?


「訪問販売って、家に来る営業のことじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、特定商取引法では、消費者が店舗以外の場所で勧誘されて契約した場合も、「訪問販売」にあたるとされています。


たとえば、「喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りて行われる展示販売など、恒常的な店舗とは認められない場所」(消費者庁「特定商取引法ガイド」より)は、訪問販売に該当する場合があります。


つまり、レンタルスペースを使ったセミナー会場でのサービス契約や、SNSで知り合った人にカフェで勧誘して販売するケースも、訪問販売にあたる可能性があるのです。


訪問販売に該当するとどうなる?


訪問販売には多くの規制があり、違反すれば行政処分の対象になります。


たとえば、お客様と契約を結んだ場合には、契約内容を記載した書面(契約書・概要書面)を交付する義務があります。書面には決められた事項を明記しなければなりません。


クーリング・オフとは?参加者が契約をやめたくなったら?


訪問販売の場合、契約後でも一定期間内であれば無条件で解除できる制度が設けられています。それが「クーリング・オフ制度」です。


例えば、突然営業マンが自宅に来て、その場の勢いで契約してしまった…といった場合、後から冷静に考えて「やっぱりやめたい」と思うこともあるでしょう。


特定商取引法では、そうした不意打ち的な契約から消費者を守るため、書面を受け取ってから8日以内であれば契約を解除できると定めています。


セミナーで契約が成立した場合も、このクーリング・オフ制度の対象になることがあります。しかも、契約時に書面でクーリング・オフの説明をしていないと、この「8日間」が開始されず、何ヶ月も後に契約解除される可能性もあるのです。


セミナーでバックエンド商品を売るときは注意!


セミナーは、安価で集客する「フロントエンド商品」として活用されることも多く、参加者に対して本当に販売したい高額な「バックエンド商品」を紹介する戦略はよくあります。


しかし、セミナーでの契約行為が「訪問販売」に該当することを知らずに勧誘・契約を行うと、後に思わぬトラブルへと発展するリスクがある点を忘れてはいけません。


さらに、「無料セミナー」と称して集客しながら、実際には契約勧誘が主目的であることを隠していた場合、それ自体が法律違反です。特定商取引法では、事業者は勧誘に先立って「契約の勧誘を行う」ことを消費者に告げる義務があるからです。


セミナー後の個別相談や、即決を促す販売方法を行いたい場合は、募集の時点でその旨を明示し、必要な書面や手続きの準備を怠らないことが重要です。


もっとも安全なのは、セミナー当日は情報提供や関係構築にとどめ、契約行為は行わないことです。


安心してセミナーを開催するために、法律の基本をおさえよう


知人限定でも、ごく少人数でも、無料セミナーでも、法律の義務は免れません。


この記事では、スタートアップ期に開催するような、少数のセミナーに共通する、最低限押さえるべきルールをご紹介しました。


取り扱う商品やサービスの内容によっては、さらに他の法律が関わる場合もあります。参加者と良好な関係を築き、トラブルなく活動を継続するためにも、法律の基本知識をしっかり身につけておきましょう!


この記事のまとめ

  • セミナーを開催する際は、景品表示法・個人情報保護法・特定商取引法のルールを守ることが大切

  • セミナー会場で契約を勧誘する行為は、「訪問販売」に該当する可能性がある。

  • 法律に違反しないよう、事前にルールを確認し、必要な準備をしておこう!


参考

「特定商取引法ガイド」訪問販売のページ-消費者庁

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